信州大学医学部歯科口腔外科レジデント勉強会

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Department of Dentistry and Oral Surgery, Shinshu University School of Medicine


いわゆる有病者の歯科治療

20. 糖尿病と歯科治療について

2000.6.7 畦上 

【定義】

  インスリンの絶対的、または相対的欠乏によって血糖値が異常に増加する疾患。

【病態】

  インスリン・・膵臓のランゲルハンス島のβ細胞より分泌される。

 糖尿病において血糖値が異常に上昇するのは、インスリンの欠乏ために血液中のグルコースを末梢組織の細胞内に取り込むことができないことによりおこる。

【臨床症状】

糖尿、多尿(頻尿)、多飲、口渇、多食、体重減少

【糖尿病の種類】

 1)インスリン非依存型糖尿病(non Insulin dependent diabetes mellitus :NIDDM)

 通常40歳以後に発病。肥満と関係しており、インスリンの相対的不足による。血糖値はそれほど高くないので症状は軽く、急性合併症を起こすことは少ない。

 治療はまず、|食事療法と運動で体重のコントロール。ついで、}経口血糖降下剤の使用。~インスリンの治療

2)インスリン依存型糖尿病(Insulin dependent diabetes mellitus:IDDM)

 25歳以前に発病する事が多い。急激に発症し、典型的な糖尿病症状を示す。膵臓のランゲルハンス島のβ細胞の破壊が原因。インスリンの絶対不足のためインスリン治療を必要とする。血糖値のコントロールが難しく、過血糖・低血糖を起こしやすい。

【糖尿病の合併症】 

急性合併症:過血糖症、低血糖症、感染症
慢性合併症:大血管障害(脳梗塞、狭心症、心筋梗塞)、
      細小血管症(網膜症、腎症)、
      神経障害(頑固な神経痛、起立性低血圧)
口腔症状: 齲蝕、歯周疾患

 

歯科治療時の注意点

(1) 問診の取り方

@糖尿病のタイプ
 使用薬剤、合併症およびその重症度の異なる

A発病時期
 年数の経っている患者では、慢性合併症を有していることがある。

Bどのような治療を受けているか
 忠^動、食事療法のみ
 東o口血糖降下剤
 買Cンスリン注射

#1は歯科治療にほとんど問題なし。#2、3は使用薬剤の投与時間・投与量の多い場合低血糖症の危険あり。

C血糖値のコントロール状態

 インスリン、経口血糖降下剤で治療しているPt.において、血糖値が比較的低い値にコントロールされている場合マ治療中に低血糖を起こす危険性がある。

D低血糖発作を起こしたことがあるか
 鋳瘡兼恃ュ作の頻度
 灯ュ作の誘因
 粕ュ作時に現れる症状
 部ュ作が現れた場合の対処方法
 又ュ作を予防するために日頃からどのような注意をしているか

E糖尿病による慢性合併症があるか

 窒ヌのような合併症があるか、またその重症度
 桃併症の治療に用いられている薬剤

(2)歯科治療に際しての注意点

◆低血糖状態が長く続くと脳損傷を起こすのでどちらか不明な時はまず、血糖を上げるための処置を行う。低血糖であれば症状は短期間で改善。高血糖であっても、糖の追加により過血糖を悪化させる心配はない。

<参考文献>

有病高齢者歯科治療のガイドライン  クインテッセンス出版

有病者の歯科治療          歯界展望


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